公爵の娘と墓守りの青年

「カエティスを連れて来いと仰るが、生まれ変わりがいるのか……?」

物語にもなっている伝説の守護騎士カエティスのことも、ウェルシールと一緒になってトイウォースは憧れていた。

『ウェルシールより先にカエティスを連れて来い』

その言葉にワルトは悩む。
五百年以上前に死んでいるはずのカエティスをどうトイウォースの元に連れて行けばいいのか。
生まれ変わりとトイウォースは言いたかったのだろうか。
それなら分かるのだが、生まれ変わりがいたとしても姿形が違うはず。
以前から命令されていたので、手始めに物語や本を基にカエティスと背格好が似ている者を手当たり次第探してみたが、見つからなかった。
前世だとか生まれ変わりだとかそういったことに興味がないワルトにとって、生まれ変わりが見つかっても、前世の記憶があるのか、ないのかすら分からない。
更に前国王の弟の息子であり、貴族の中でも強い権力を持ち、ウェルシールが国王になった瞬間に第一王位継承権になるトイウォースに、伯爵の位を持つワルトが逆らえるわけがない。

「……どうしたものか」

それだけを呟いて、ワルトはすっかり暮れてしまった空を馬車の中から見つめた。




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