公爵の娘と墓守りの青年
ワルトが馬車で悩んでいる頃、舗装された街道で真っ黒な空を見上げる少女がいた。
「あ。騎士と女神がやっと再会したみたいだ」
安堵するような声音で、少女は呟く。
少女が見上げる空には輝く星が二つ寄り添うように並んでいる。
「……ということは、そろそろ私の出番かな?」
いたずらを思い付いたような笑みを浮かべ、少女は地面に置いた荷物を背負う。
旅装束の少女はもう一度、空を見上げた。
寄り添い輝く二つの星から少し離れた位置に、不気味に輝く星がある。
その星が周りを巻き込むように、暗い輝きを増していた。
眉を寄せて、少女は溜め息を吐いた。
「……今度こそ、止めを刺さないと、また長い螺旋から抜けられないよ、騎士」
二つに結んだ長い茶色の髪の先を指でいじりながら、少女は青い目で不気味に輝くその星を睨み据えた。
「私も一緒に終わらせないと、ゆっくり出来ないから、早く騎士のところに行かなきゃ」
そう言って、少女は止めていた歩をもう一度動かした。
軽い足取りで歩きながら、肩に提げている荷物を背負い直す。
少女の二つに結んだ長い茶色の髪が歩く度に揺れた。