公爵の娘と墓守りの青年
「むぅ……あの時のおじいさんは何だったんだろう……」
眉を寄せて、リフィーアは小さく呟いた。
今思うと、あの老人は自分の何を驚き、何処へ連れて行こうとしたのだろうか。
そして、その時、自分を助けてくれた青年は誰だったのだろうか。
顔も声も全く思い出せず、あれから一緒にいたサイラードに聞いても、彼も思い出せないと言っていた。
四歳だったとはいえ、少しでも何か覚えているだろうと思うのに、何も思い出せないのは何故だろう?
「うぅ……やっぱり分からないや。私って、本当に頭が悪いなぁ」
大きく溜め息を吐き、リフィーアは肩を落とした。
落胆した様子の自分が近くの家の硝子に映っていることに気付き、リフィーアは姿勢を正した。
「落ち込んでもしょうがないか。カイさんとたくさん話して、鬱憤を晴らそう!」
ぐっと拳を握り、リフィーアは差し入れを片手に足早に都の中央にある墓地へと向かった。
墓地へと続く門をくぐり、リフィーアはまっすぐカイとビアンがいるはずの小屋に向かう。
その道すがら、リフィーアはふと立ち止まった。
舗装された道から、その先にある墓地を見つめ、眉を寄せた。