公爵の娘と墓守りの青年
カイとビアンの小屋に入ろうと思ったが、怪しげな連中が迫っているため諦めたリフィーアは墓地の奥へと駆けた。
「もう怒られてもいいから、行っちゃえっ!」
墓地の奥は都の住民はもちろん、都の長でも入ることが許されていないのは住民であるリフィーアも知っているが、今回は緊急を要する。後で怒られてもいいから、怪しげな連中からとにかく離れたかった。
初めて、墓地の奥に足を踏み入れたリフィーアは後ろを気にしながら自分と同じくらいの背の草むらに素早く入り、隠れた。
「……何でカイさんもビアンさんもいないの」
小声でリフィーアは呟き、草の葉の間からじっと怪しげな連中の動向を窺った。
すると、草の間から手が伸びてきた。
「きゃあっ!」
いきなり現れた手に驚いたリフィーアは声を上げた。
手はそのままリフィーアの右手首を掴み、持ち上げた。
手首を掴まれ、リフィーアは宙吊りのまま、足をばたつかせた。
手首に痛みを感じ、顔を歪ませながら掴んできた相手をリフィーアは見た。
先程の怪しげな連中のうちの目が合った男だ。
虚ろな目で、持ち上げたリフィーアを男は見る。