公爵の娘と墓守りの青年
「なら、問題ないだろう」
カイの言葉にこちらも眉を寄せ、ビアンが低く呟いた。
「いや、そうなんだけど、何か違和感がさぁ……」
「結界の綻びはないのだろう? 昔、心配しなくてもいいと言ったのはお前だぞ。カエティス」
ビアンの言葉を聞きながら、両手を組み、カイはもう一度、唸る。
「それでも、何か違和感というか、嫌な予感が感じるんだよなぁ」
小さく長い息を吐き、カイはそう呟いた時だった。
『きゃあっ!』
聞き覚えのある女の子の悲鳴が墓地から響いた。
「今の声、リフィーアちゃん?!」
目を見開き、カイは墓地の方へ頭を巡らせる。
「そのようだな」
同じようにビアンも墓地を見つめ、頷いた。
「……おい、カエティス。マズイぞ。小娘が人間に襲われてるぞ」
墓地から漂う空気に含まれる匂いと音を感じ取り、ビアンは低い声で告げた。その声には焦りが混ざっていた。
「えっ、人間?! 何でなのかは後にして。ビアン、行くよ」
「……俺も行くのか!?」
驚いた声音で、ビアンは勢いよくカイの顔を見た。
「当たり前だろう? 場所はビアンが知ってるんだからさ」
「すぐそこだ、すぐ。だから、行かなくてもいいだろ」