公爵の娘と墓守りの青年
「いや、だから、それは駄目だって俺、言ってるよな、ビアン」
長い溜め息を吐きながら、カイは気を失ったままのリフィーアに顔を向ける。
怖かったのか、眉間に眉を寄せてカイの黒いマントを掴んでいる。
強く掴んでいるリフィーアの手をそっと外し、カイはビアンを見た。
「ビアン。リフィーアちゃんをよろしく」
「そのことだが、俺では小娘を運べな……」
「却下。ちゃんと人の姿になったら運べるだろ?」
にっこりと笑顔でカイが告げると、ビアンは渋面になった。
「……はぁ。仕方がない。分かった。小娘を運べばいいのだろう? 全く人使いが荒い」
大きな溜め息を吐きながらビアンは呟き、彼の身体が白い光に包まれた。
カイが瞬きをいくつかした時、白い光は収まり、そこには白銀の毛並みの狼から肩までの長さの白銀の髪の青年に姿を変えたビアンが立っていた。
「これでいいのだろう、これで」
拗ねたような表情を浮かべ、ビアンはそっぽを向く。
「ありがとう、ビアン。リフィーアちゃんをよろしく」
拗ねるビアンに苦笑して、カイは気絶したままのリフィーアを彼に預ける。
ビアンは諦めたように頷き、リフィーアをカイから引き受ける。