公爵の娘と墓守りの青年
リフィーアを慎重に抱き上げ、ビアンは自分達が住む小屋へ向かった。
小屋へ向かうビアンを見送り、カイは怪しげな連中を見た。
どういうわけか、彼等はお互いにナイフを向け合っていた。
「仲間かどうかは分からないけど、仲間割れ……?」
不審に思いつつも、カイは相手が動いた時に応じられるように様子を窺う。
カイの様子に気付いた一人が、こちらを向いた。
「ハカモリ、コロス。ボチ、テニイレル」
ゆっくりカイの方へ歩きながら、怪しげな連中は呟くように言った。
「あー……俺狙いだったのかぁ……。リフィーアちゃんにもこの人達にも悪いことしちゃったな」
息を吐き、カイは頭を掻いた。
その時、怪しげな連中がそれぞれ動いた。
怪しげな連中それぞれのナイフがカイを襲う。
カイは胸に刺さる寸前のところを横にとんとんとテンポ良く跳び、器用に避ける。
「うーん……何だか操られてることもあって、躊躇いないなぁ」
いくつものナイフの切っ先を舞のように躱し、カイは頬を掻く。
ナイフを避けながら、目だけを動かして辺りを見回す。
「やっぱり術者の気配はしないし。参ったなぁ」