公爵の娘と墓守りの青年

「……やっぱり駄目かぁ。うーん、じゃあ、次に無理そうな気絶でやってみようか」

大きく溜め息を吐き、カイはシャベルを地面から引き抜いた。
カイはちょうど目の前にやって来た男の首筋に、シャベルの柄の先を強く当てた。
しかし、術者に操られていることもあり、男は倒れない。
その男がカイの脇腹目掛けて、ナイフを突き出した。

「わわっ!」

カイは咄嗟に後ろに飛ぶが、ナイフの切っ先が脇腹を掠める。

「危ないなぁ……。避けれて良かった。刺さってたら、ネリーに怒られるところだった」

安堵の息を洩らし、カイは額の汗を拭った。

「気絶も無理だったし、最後は動けないようにする、か……」

小さく唸り、カイは腕を組んだ。

「あんまり使いたくない方法だけど、これしかないし、やってみようか」

そう呟き、カイは怪しげな連中から再び距離を取った。
両足を少し広げて構えたカイは、右手を前に突き出した。
その右手から白い光で出来た紋様が現れ、どんどん大きくなって広がっていく。
白い光の紋様は意思を持つかのように、怪しげな連中達の足元へと飛んでいく。
怪しげな連中全員の足元に白い光の紋様が付き、より一層輝きを増す。
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