公爵の娘と墓守りの青年
「はい。この話は長くなるからこれで終わりにしてっと。君はどうして一人でここに来たんだい?」
話をさらりと変えて、今度は男がリフィーアに尋ねた。
「えっ? あっ、わ、私は、両親のお墓参りに……」
さらりと話を変えられて、リフィーアは慌てて答えた。
「ご両親のお墓参りかぁ……。まだ若いのに偉いね」
柔らかく水色の右目と銀色の左目を細めて、男は穏やかに微笑んだ。
その微笑みが肖像画の中の父のようにとても優しくて、目の前のまだ二十代くらいの彼に失礼だと思いながらも、リフィーアは見つめた。
「それで、君のご両親のお墓は何処にあるんだい?」
「あなたの後ろですけど……」
おずおずと指で示し、リフィーアは呟いた。
指で示された方へと男は向いた。
二つの墓に書いてある名前を追っていく彼の目が驚きの色を浮かべた。
「え……? 君、ウィンベルク公爵の娘さん? リゼルくんとフィオナちゃんの……」
「は、はい……そうですけど……」
自分の名字と両親の愛称を言い当てられ、リフィーアはひどく驚いた。
訝しげにリフィーアは男を見た。
「そうかぁー。言われてみると、確かに君、二人にそっくりだね!」
昔を懐かしむように男はリフィーアを見て、何度も頷いた。
男は「そうか、そうかぁー」と言いながら、ただ頷くだけで両親との関係を説明しない。
「一人で納得しないで下さい! 私の両親とどういう関係なんですか?!」
説明をせず、にこにことただ笑う男にしびれを切らし、リフィーアは声を上げた。