公爵の娘と墓守りの青年
「そうだけど、僕はこの子にも、カイにも幸せになって欲しいんだ。僕と妻を引き合わせてくれた、二人に……」
小さく、泣きそうな声で、男はカイに言った。
「――ありがとう。でも、俺なんかより、まず、この子の幸せを考えてあげないと。俺は後回しにして、親なんだから、この子を全力で幸せにしてあげなくちゃ」
暗闇でリフィーアには分からないが、男の身体にカイが軽く叩くような音が聞こえた。
「そうだね。この子は僕と妻の宝。だから、しっかり守って、幸せなお嫁……いやいや、お嫁さんはまだ……!」
「あのさ、そこまで今考えなくていいから。早過ぎるって」
「そ、そうだね……。ごめん、ついつい先のことを考えてしまって。あぁ、でも、この子に恋人が出来たら……!」
悲鳴を上げそうな声で男は叫んだ。
「落ち着いて。はい、この話はこれでおしまい。ところで、この子のお母さんはどうしたんだい?」
「えっ? あれっ、さっきまでそこにいたのに……!」
慌てた男の声と、立ち上がる音が聞こえた。
「えっ、どうしよう、どうしよう! まさか、実家にお帰り順路?!」