公爵の娘と墓守りの青年
「……しまった。聞かないで、俺が探せば良かった……」
困ったような声で、カイが小さく溜め息を洩らした音が聞こえた。
「こらこら。何、カイ君を困らせてるのよ。貴方は」
突然、女性の声が聞こえた。
聞き覚えのあるような、ないような女性の声にリフィーアはまた首を傾げた。
「ああっ! 良かったぁー……。実家に帰ったと思った」
安堵の息を男は洩らす。
「うん? そんなに帰って欲しかった?」
「いやっ、それだけは……! 僕もこの子も泣いちゃうよ」
「この子はともかく。大の大人が泣くのは勘弁して欲しいわ。ねぇ、カイ君」
「あのさ、そこで俺に振らないでもらえるかな? 俺、まだ結婚していないし、子供もいないからさ……」
突然、話を振られたカイが困ったような声で言った。
「それなら、早く結婚しなさいよ。いるのでしょう? 恋人」
「え……うん、まぁ、ね」
歯切れの悪い言い方で、カイは頷くように言った。
「今度、カイ君の恋人、私達に会わせてね」
「うん、機会があれば。ところで、この子の名前は決まったのかい?」
「もちろん! 二人の愛の結晶だから、二人の名前から取ったんだ」
嬉しそうな声音で、男は言った。