公爵の娘と墓守りの青年
カイの優しく、穏やかな声にリフィーアは強くそう思った。
目を開けてみると、そこには見覚えのない天井があった。
「……ここは?」
声に出して呟き、リフィーアはゆっくりと身体を起こす。
先程までの暗闇の中ではなく、木材で作られた部屋に自分はいた。
朝なのか、昼なのか分からないが、日当たりが良い所のようで日差しが窓から洩れている。
リフィーアは見覚えのない部屋をゆっくり首を巡らせてみる。
部屋はそんなに広くはなく、食器類や物もごく僅かな数しかない。どちらかというと殺風景な部屋だ。
その部屋の片隅にたくさんの本が棚に収められていた。
「……何の本だろう?」
あまり広くはない部屋に不釣り合いな程の量の本に、リフィーアは首を傾げる。
「――古いただの本だ」
「?!」
機嫌が悪そうな低い声が背後から聞こえ、リフィーアは驚いて振り返った。
見ると、日の当たらない陰になる位置に、肩までの長さの銀色の髪、金色の目、端整な顔立ちの青年が立っていた。
「だっ、誰っ?!」
見覚えのない人間離れした顔立ちの青年に、リフィーアは声を上げた。
「……気付いたようだな。全く、手のかかる小娘だ」
大きな溜め息を吐き、青年は両腕を組んだ。