公爵の娘と墓守りの青年
「ああ、説明してなかったね。ごめんね。君のご両親はね、よくここに来てくれて俺の話し相手をしてくれてたんだ」
尚もにこにこと笑みを浮かべて、男は簡単に説明をした。
「話し相手、ですか?」
「そう。俺、ここの墓守りで、ここから離れられない分、とても暇でね。君のご両親が俺を気に入ってくれて、時間がある時に来て話し相手をしてくれたんだよ」
昔を懐かしむように目を細めて、嬉しそうに男は話した。
「そうだったんですか。お父さんとお母さんが……」
自分の両親のことを嬉しそうに話す男に、リフィーアも嬉しくなって口元が綻んだ。
「あの、あなた、墓守りさんなんですか?」
男がそう言っていたことをふと思い出し、リフィーアは尋ねてみた。
「そうだよ」
尋ねられ、男は大きく頷いた。
「私、小さい時からここに来てますけど、墓守りさんがいるなんて知りませんでした」
「大体、夜に起きてるから昼間とかは寝てて、あまり外には出ないんだ。だから会わなかったし、知らなかったんじゃないかな? ここの都のほとんどの人が俺のことは知らないよ」
「どうしてですか?」
眉を寄せて、リフィーアは小首を傾げた。
「どうしてって……。えーっと、泥棒さんは夜にお墓の中の物を盗むために活動するから、見張りする時は夜じゃないと意味がないよね? 朝や昼だと人が行き来するし、見つかりやすいし。だから、俺もそれに合わせて生活してるから、会わないし、ここの都のほとんどの人は俺のことを知らないんだよ」
苦笑を浮かべながら、男は分かりやすく説明した。
小さな子供に説明しているようにリフィーアは少しだけ感じたが。
それでも分かりやすかったので、リフィーアは納得して頷いた。