公爵の娘と墓守りの青年
「なるほど。そうだったんですね。あ、あの、墓守りさん以外に墓守りさんはいないんですか?」
「俺以外? いないよ」
きょとんした顔で男は首を振った。
「じゃ、じゃあ、いつも一人なんですか……?」
「そ、そうでもないんだけどねー……」
言葉に窮し、どう説明したらいいかというような表情で男は頬を掻いた。
その時だった。
男の背後の茂みから大きな白いものが現れ、彼の背中に乗った。その重さに耐えきれず、男は勢い良く地面に突っ伏した。
まるで先程の話を聞いていたかのような、ちょうど良いタイミングだ。
「重いっ!」
自分の背中に乗っている大きな白いものに向かって、男は声を上げた。
「……あ、あのー、大丈夫ですか?」
突然のことに驚きながらも、リフィーアは大きな白いものに潰された男にとりあえず尋ねた。
「だ、大丈夫……いつものことだから。ちゃんと忘れてないから、ほら、降りて」
重いのか、男はよろよろと地面から起き上がり、背中に乗っている大きな白いものに言った。
大きな白いものは男に言われ、素直に従った……ように見えた。大きな白いものは言葉を解すことが出来るのか、更に背中に乗りかかった。
再び、男が地面に突っ伏した。
「……あの、本当に大丈夫ですか?」
心配している声ではあるが、リフィーアの顔は笑っていた。
「……うん、大丈夫だけど、笑うか心配してくれるかどちらかにしてくれないかな?」
男は苦笑しながら、尚も乗っている大きな白いものを退けようともがいていた。