公爵の娘と墓守りの青年
少しの間もがき、ようやく退かした男は起き上がった。
男の背中から降りた大きな白いものは満足したのか、彼の横にぴたりと座った。
リフィーアも笑いを収め、男の横に座る大きな白いものを見た。
大きな白いものは白銀の毛並みの犬のような狼のような動物で、金色の目が興味深げにリフィーアを見ている。
「墓守りさんは、狼を飼ってるんですか?」
「飼ってないよ。彼は俺の相棒だよ」
首を振って、男は隣に座る相棒の背中を撫でた。撫でられた相棒は白銀の太く長い尻尾を男の手に当てる。
「彼ということは雄、なんですか?」
「そう。男だよ」
雄とは言わず、男と言って墓守りの男は頷いた。
「彼の名前はビアンっていうんだ」
穏やかに微笑して、男はビアンという名の狼の頭を優しく触れた。
紹介されたビアンは、男の手に尚も尻尾を当てる。
「ビアンさんっていうんですか。よろしくお願いします」
にっこりと笑って、リフィーアはビアンに挨拶した。
その時、ふとリフィーアは何かに気付いた。
「あっ、私、まだ名前言ってませんでしたよね?!」
「ああ、そういえば俺も名乗ってなかったね」
手を叩いて、男はのんびりと呟いた。
「私、リフィーアっていいます。名字は知ってる通り、ウィンベルクです」