公爵の娘と墓守りの青年
笑い声が消えた闇の中で、青年は膝をついた。
自分がいるこの闇はこれからも続くように青年は思えた。
その考えに至ると、この闇がそうさせるのか、内から絶望が押し寄せて来た。
「私が……私の身体が罪を犯す前に、誰か、私を殺してくれ……っ!」
嘆きの叫びが闇の中で反響し、更に絶望がやって来る。
苦しげに眉を寄せ、青年は闇の中に倒れ伏した。
『伝説の守護騎士、カエティス。本当に居るのなら、どうか、ウェル達を守って……』
「……? 誰かの声?」
カイは不意に聞こえた声に気付いて、頭を巡らせる。
誰もが眠りに就いている夜中に聞こえた声に、カエティスの墓に縋ったままカイは眉を寄せた。
「……いつも聞こえる死者達の声じゃないし、気配もないし……。誰の声だろう」
カイは眉を寄せたまま、自分の墓の近くに目を向けた。
寝袋の中で丸まったイストと、狼の姿に戻ったビアンが幸せそうな柔らかい表情で眠っている。
イストとビアンに穏やかな笑みを浮かべ、カイはもう一度眉を寄せた。
「……切羽詰まったような声だったし、知らない声だけど、どうして俺の名を呼んだのだろう?」