公爵の娘と墓守りの青年
朝が訪れ、リフィーアはカーテンの隙間から射し込む太陽の光で目を開けた。
ゆっくりと起き上がり、目を擦りながらベッドから出る。
小さく欠伸をして、ポットに水を入れ、火を点けた。
水が沸騰するまでの間に、顔を洗い、服を着替える。
リフィーアはいつもの朝を迎えられたことに、死んだ両親と国を守護する女神に感謝した。
そして、昨日新たに買ったパンを食べた。墓守りの青年カイにあげて、両親の墓に供えてなくなったため、帰りに買ったものだ。
硬いパンをかじり、リフィーアはコップの中の水を眺めた。
「いつも一人なのかなぁ、カイさん」
昨日、墓地で出会った透き通った水のような水色の右目、意志の強い鋼のような銀色の左目を持つ墓守りを思い出し、リフィーアは呟いた。
彼の相棒で狼のビアンがいるとはいえ、毎日一人は辛いのではないのか。
リフィーアも一人で暮らしているが、隣の家には両親の友人が住んでいて、ほとんど毎日顔を出してくれる。
叔父の家族も近くに住んでいるので寂しくはない。最近は何かと理由を付けて、自分を公爵になるように言ってくるので逃げているが。
リフィーアの周りは皆、優しく接してくれる。周囲の人達に支えられて生活しているが、カイはどうなのだろう。
「……むぅ、気になる」
眉を寄せ、大きな緑色の目を細める。
「考えてもしょうがない! 本人に聞きに行こう!」
リフィーアはすっくと椅子から立ち上がり、食器類を片付ける。
片付け終わり、リフィーアは家を出た。