公爵の娘と墓守りの青年

「……俺が倒れちゃったら、イスト君、怒って彼に向かって飛び出すかも……」

それもマズイ、と思いながら、カイは目の前の青年に向かって駆けた。
痛みで足の感覚があまりないが、気にせずに勢い良くシャベルを降り下ろす。
青年も黒い光を集中させ、カイに放つ。
シャベルから放たれる白い光と、青年の黒い光が明滅する。
リフィーア達はその眩しさに目を閉じる。
しばらくの間、白と黒の光は明滅を続ける。
明滅でカイと青年の様子が分からず、リフィーア達は明滅が収まるのを待った。
ようやく明滅が収まり、リフィーア達は目を開けた。
太陽の眩しさに目を慣らした後、リフィーア達は目の前の光景に目を瞠った。
青年の放った黒い光は刃に変わり、カイの背中に突き刺さっている。

「――隊長っ!」

声を上げて、イストはカイに駆け寄った。
カイの持っていたシャベルは粉々に砕けて地面に落ち、黒い布で覆われていた青年の顔が露になっている。
その彼を見て、ウェルシールは茫然と立ち尽くし、青年の正体を知る。

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