公爵の娘と墓守りの青年
「……トイウォース、殿……? どうして……」
「隊長っ、カエティス隊長!」
悲鳴に近い声で、カイの名を呼び、イストは彼を支える。
「……よくも、隊長を……!」
剣を構え、怒りに満ちた目で青年――トイウォースをイストは睨み、今にも飛び出そうとしている。
それをカイはゆっくりとイストの前に手を出し、彼を止める。
「イスト君、駄目だ。君は動かないで……」
痛みに耐えながら、背中に刺さった黒い光の刃を抜き、カイは言う。
「どうしてですか?! 彼がウェル様の従兄だからですか?! 彼は貴方を殺そうとしているんですよ! いくらウェル様の従兄と言えど、俺はそんなの耐えられません!」
「そうじゃないんだよ……。まだ若い君に人を殺して欲しくないんだ。それに、彼をまだ、救える……」
そう言って、カイは痛みに耐えながら、ゆっくりと感覚のない足を進める。
「……彼から離れてもらうよ」
そして、手を虚ろな目のトイウォースに近付け、カイはシャベルから放っていたものと同じ白い光を出した。