公爵の娘と墓守りの青年
震える声でエマイユはイストに尋ねた。
ネレヴェーユはイストの元に駆け寄り、彼に身を預けて気を失っているカイの手を握る。
「カエティス……カエティス……っ」
目に涙を溜め、ネレヴェーユは少し冷たいカイの手を自分の顔に近付ける。
血だらけではあるが、息はしっかりとしている。
ネレヴェーユは少し安堵し、イストが状況を説明しているのを聞く。
それを聞いたエマイユは大きな溜め息を吐いた。
「……この、馬鹿カイっ。無茶にも程がある! 命に別状はないみたいだけど、死んだら元も子もないって知ってるだろう。一番、知ってるくせに何回目だよ」
気を失っているカイに怒りをぶつけ、エマイユは不機嫌な顔のまま、イストを見た。
「とにかく、これからのことも考えないといけないし、この馬鹿と国王の従兄の手当てもしないと。イスト、小屋へ連れて行って」
「えっ、あ、はい!」
エマイユの不機嫌さに少し慌ててイストはカイを背負い、小屋へ運ぶ。
エルンストも兄に倣ってトイウォースを背負い、小屋へ向かった。
「イスト兄さん、明らかに年下のお嬢さんの何に慌ててるんですか」
「……いや、これには深い理由があるんだよ」