公爵の娘と墓守りの青年

身体のあちらこちらにある切り傷、刺し傷を見て、エルンストは驚く。中にはどう見ても致命傷であろう傷もある。傷跡までしっかり残っている。
無駄な肉のないカイの身体にある古い傷や今回付いてしまった傷の多さに、エルンストはまじまじと眠るカイを見つめる。
その間にも慣れた手付きでイストが消毒薬を塗り、包帯を巻いていく。

「女神様とか色々な人の加護があるんじゃないかな?」

背後から少女の声が聞こえた。
イストとエルンストは振り返るとそこにはエマイユ達が立っていた。
エマイユの後ろに立っていたネレヴェーユがイストと椅子で眠るカイに近付いた。

「カイの……カエティスの怪我はどうですか?」

「大丈夫ですよ、ネレヴェーユ様。隊長のとんでもない回復力と体力、貴女の加護のお陰か傷もゆっくりですが塞がり始めてますから」

ネレヴェーユを安心させるようにイストは微笑んだ。

「……良かった……」

安堵の息を洩らし、ネレヴェーユはカイの顔を見た。
血が足らないのか、まだ顔は青いがしっかり規則正しく呼吸を繰り返している。
手当てを終えたイストはカイを背負い、ベッドに寝かせる。

「……あの、そろそろどういうことなのか詳しくお話を聞かせて頂けませんか?」

< 227 / 482 >

この作品をシェア

pagetop