公爵の娘と墓守りの青年

首を緩く振り、イストは答える。

「父上は知っていたんだ、イストやカイさんのこと」

そう言って、ウェルシールは小さく俯いた。
少しだけ置いてきぼりにされたように感じた。
話せない理由はウィンベルク公爵から聞いたので分かるのだが、それでも話して欲しかったと思った。
そこでふと、ウェルシールは何かに気付いた。

「あの、でも、待って下さい。女神様やイストや貴女が前世で物語の関係者だというのは分かりました。でも、どうして、カイさんは生まれ変わりではなくて『カエティス本人』と仰ったのですか?」

「そのことなんだけど、口で上手く説明が出来ないんだよね。実際に過去を見てもらった方が早いんだけど、今の私は前世の時と違って、魔力に制限があるしなぁ」

腕を組んで、エマイユは悩む。

「――方法ならあるぞ」

小屋の扉側から男の低い声が聞こえた。

「ビアンさん」

声がする方向へリフィーアは振り返ると、そこに人の姿のビアンが立っていた。

「魔狼、どうしてここに? 何処かへ行ってたんじゃないの?」

「カエティスの血の臭いがしたから戻ったんだ」

「そうだったのか。ところで魔狼。方法があるってどういうこと?」

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