公爵の娘と墓守りの青年
「……えーっと、だからって、どうして来ちゃうかなぁ」
金の色が所どころ混じっている赤い髪を掻き、カイは困った顔で呟いた。
「私、気になると眠れないんですよ。それに、私の両親のこと、知りたいんです」
だから遊びに来ました、と屈託のない笑顔でリフィーアは自分より頭一つ分背の高いカイを見上げた。
「いや、あのね? ここは結構、危ないんだよ。昨日も言ったように、夜は泥棒さんや危ない人達が来るし、怖いものも出て来るし」
「でも、それは夜でしょう? 今はお昼前だし、人通りもありますよ」
尚も、にっこりと笑い、リフィーアは言った。
痛いところを突かれ、カイは小さく息を吐く。その横でビアンが鋭い牙を見せる。
墓守りの相棒が自分達の会話を聞いて笑っているようにリフィーアは感じた。考え過ぎだと思うが。
「そういう問題じゃないんだけど……。まぁいいや。でも危なくなったら、すぐ逃げること。いいね、リフィーアちゃん?」
リフィーアの押しに観念したのか、カイは苦笑した。
「はい! 分かりました!」
「……俺って、小さい子に弱いなぁ」
リフィーアに聞こえないくらい小さな声で、カイは呟いた。
「……小さい子にというより、女の子にな」
横で聞いていたビアンもリフィーアに聞こえないくらい小さな声で訂正した。
「それで、俺に聞きたいことって何かな?」
「えっと……ちょっと聞きにくいことを聞いてもいいですか……?」
申し訳なさそうな、言いにくそうな表情でリフィーアは見上げた。