公爵の娘と墓守りの青年
「言いたいことは分かるよ、ウェル。今の私が、今までと違うと言いたいのだろう?」
苦笑を浮かべ、トイウォースは従弟に顔を向ける。
「……ある日を境に、私の中から知らない声が聴こえるようになった。その声が日に日に強くなり、私の身体を動かすようになった。それが、今までの私だよ。声が動かす間の記憶もある。謝って済む問題ではないけれど、ウェル、今までごめん」
頭を下げ、トイウォースは謝った。
「ウィンベルク公爵のお嬢さんも、皆さんもすみませんでした」
「……トイウォース殿は闇の力に乗り移られていたのですか?」
「そうだよ。その話はカエティス殿が目覚めてから話すよ。今は、過去を見に行かないと」
ベッドから降りたトイウォースは立ち上がり、ウェルシールに言う。
「彼の言う通りだ。国王、後で考えろ。魔狼、その場所に案内してくれる?」
まだ戸惑いを隠せずにいるウェルシールにエマイユは言い、それからビアンを見る。
「ああ、こっちだ」
小屋から出て、ビアンは案内する。
彼に続いて、リフィーア達も小屋から出て行く。