公爵の娘と墓守りの青年
「さて。私は帰らせてもらう。またな、カエティス」
「ちょっと待った! ネリーを解放して欲しいのだけど」
「それは出来ない」
「どうしてです……えっと、どうして?!」
もう一度ラインディルに一睨みされ、カエティスは言葉を慌てて変えた。
「娘は罪を犯した。人間を生き返らせ、更には神の力を与え、その者の運命を変えた。本来ならしてはならないことだ」
「それはそうだけど、俺がネリーなら同じことをしていたよ」
「では、それを全ての人間に出来るか?」
「…………」
神の問いに、カエティスは言葉を詰まらせ、言い返すことが出来なかった。
「出来ないだろう。それを娘はお前にした。頭が冷えるまで解放はしない。それに負の集合体は娘を狙っている。あれに娘を渡す気はない」
ラインディルの言葉に、カエティスは目を穏やかに和ませる。
神である前に子を持つ父親の顔を垣間見た気がした。