公爵の娘と墓守りの青年
「いや、俺が神様の孫で納得されるのは心外なんだけど。俺、一般人だし」
「その魔力で剣も強いカエティスが一般人って言っても説得力ないから」
床に座り込み、ベッドに頭を置き、レグラスは反論する。
「……とにかく、これからのことをトーイ達と相談しないといけないね」
溜め息混じりにカエティスは呟いた。
ベッドの横に立つミシェイルと、床に座り込んだレグラスは真剣な表情で静かに頷いた。
それから、半年後。
世界の神、ラインディルの言葉通り、トイウォースの祖父は負の集合体と共に再び、ネレヴェーユを手に入れようと現れた。
父である神の元にいるとは知らないトイウォースの祖父は女神を探しながら、トイウォース達とぶつかる。だが、カエティスとの戦いの影響か前と比べて勢いはなく、僅か半月で戦いは終える。
カエティスと国王のトイウォース、ウィンベルク公爵を継いだクレハノールの手によって、負の集合体と三代目のクウェール国王の魂は封じられた。
クレハノールが治める街のカエティスが育った場所――街の奥にある森に。
そして、街は都と呼ばれ、新たな名が付けられる。
国を守り、志し半ばに命を落とした騎士、カエティスの名から、カエティスの都――と。
「……複雑だなぁ。俺、生きてるのに」
騎士の服装から、普段着の上に黒いマントを引っ掛けた服装に変えたカエティスは、目の前に建つ大きな墓を見上げる。
「仕方ないさ。俺達、死んじゃったことになってるんだしさ」