公爵の娘と墓守りの青年
「俺は自分で選んだことだけど、どうしてレグラスまでここにいるんだい?」
黒い髪のかつらを外し、元の水色の髪を露にしたレグラスを見て、カエティスは尋ねる。
「そりゃ、アレだよ。お前にもしもがあった時の為だよ。お前がここの結界の要なんだから、お前が狙われるだろ? その護衛兼長ーい人生の話し相手。優しい幼馴染みだろ?」
にやりと口元に笑みを作り、レグラスは剣を仕込んだ杖を振り回す。
「……自分で言わなかったらね。でも、嬉しいよ、ありがとう」
穏やかに微笑み、カエティスは手に持つシャベルの先を地面に刺す。
ひっそりと建つ育った小屋の近くにある小さな墓を見つめる。
「……新しい命は紡げないけど、こういう守り方もあるんですね、先生……」
小さく、レグラスにも聞こえない声で、カエティスは呟いた。
何かを見つけたような、そんな声音で、カエティスは穏やかに微笑んだ。
扉が内側から開く音が聞こえ、レグラスは石に縋ったまま、そちらに目を向ける。