公爵の娘と墓守りの青年
「隊長のお陰で無事です。ありがとうございます」
「気にしなくていいよ。ところで、皆はどうしたんだい?」
普段なら不機嫌ながらも近くにいるビアンや、心配そうに見つめるネレヴェーユ、説教をするエマイユ達がいるはずなのに、誰もいない。
「皆さん、隊長やミシェイル達の過去を見に行きました」
「え? 俺達の過去? もしかして、レグラスのところ?」
カイの問いに、イストは頷いた。
複雑な表情をカイは浮かべる。あまり知られたくなかった。そんな表情だ。
「……そっか。じゃあ、そろそろ俺も覚悟を決める時かな……」
小さく呟き、カイはベッドから出る。
「隊長……?」
「イスト君。今からちょっと準備してくるよ。準備が終わったら、剣の稽古に付き合ってもらえないかな?」
穏やかに微笑み、カイは尋ねる。
「よ、喜んで! 俺の方からもよろしくお願いします!」
大きく頷き、イストは目を輝かせた。
「こちらこそ、よろしく。あ、ミシェイルの剣も取ってくるよ」
「え、あ、はい! そうか、ミシェイルが使ってた剣、預けてましたよね。隊長に」
「泥棒が出るから、ちゃんとした場所に置いてるけど、ちょっと遠いし、封印してるから時間かかるけど、ちょっと待っててね」