公爵の娘と墓守りの青年
半眼で睨み、レグラスはカイに向けて杖を振る。
二歩後退して、カイは軽い足取りで杖を避ける。
「……お前、怪我してる割には余裕で避けるよな」
「君がゆっくり振ったからでしょ」
「結構速めに振ったんだけど。ついでに言うと、途中からかなり速く振ったんだけど?!」
「え? あれ……? 何で楽に避けれたのか自分でも気になるけど、まぁ、いっか」
少しだけ首を傾げたが、カイはそのまま話を終わらせる。
「よくねぇーよ! 気になるんなら解明しろよ! 俺が眠れなくなるじゃん!」
「大丈夫、俺は眠いから」
「お前の眠気はどうでもいいんだよ、この際。俺の眠気を返せ」
「あ、封印してるアレって、中だったよね? こっちの」
二つある扉の内、右にある青い扉を指差し、カイは聞く。
「やっぱり、お前も無視かい。ああ、そーだよ。カエティスが大事にしてるアレはそっちにあるよ」
むすっと頬を膨らませて、レグラスは頷く。
「分かった。ありがとう。取りに行ってくるよ」
「気を付けろよー」
杖を左右に振りながら、レグラスは二つある扉の内、青い扉に入っていくカイを見送る。
青い扉の中に入り、カイは目的の物がある場所へまっすぐ歩く。