公爵の娘と墓守りの青年

部屋の奥、エマイユ達にはレグラスの部屋と教えたその部屋は、彼の部屋ではない。
その部屋はカイが五百年前に使っていた赤眼(せきがん)の剣と鴨頭草(つきくさ)の剣、ミシェイルが使っていた魔力を帯びた剣が封じられている部屋だ。
地面に触れることなく、立てた状態で浮いている三振りの剣に近付き、カイは鴨頭草の剣の柄に触れる。

「久しぶりだね。鴨頭草、赤眼。それと翠宵(すいしょう)も」

カイの言葉に反応して、鴨頭草の剣から青色のオーラ、赤眼の剣から赤色のオーラが彼の手に触れる。遅れて翠宵の剣から緑色のオーラがカイの手に触れる。

「鴨頭草も赤眼も元気そうだね。良かった。翠宵、ミシェイルの生まれ変わりのイスト君が君に会いたがってるよ」

そう言って、カイは微笑して、右手に魔力を込める。

「君達の力を貸して欲しい。この長い戦いをもう終わらせたいんだ」

カイの言葉に応えるように三振りの剣からそれぞれの色のオーラが彼の左手に触れる。

「――ありがとう。またよろしく。鴨頭草、赤眼、翠宵」

カイは礼を述べ、右手に込めた魔力を三振りの剣に目掛けて放つ。



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