公爵の娘と墓守りの青年
「それに、俺がここの墓地を守ると決めたのは、俺の出来る唯一のことだと思ったから。あとはトーイにも昔、言ったけど」
頬を掻きながら、少し恥ずかしそうにカイは告げる。
「トーイと俺が立つ場所を同じにするには、まず真逆の位置から始めないと。って言ったよね」
穏やかに微笑み、カイは言う。
カイの言葉に、エマイユは大きく目を見開く。
「トーイは国を王として守る。俺はここで墓守りとして国を守る。そこから始めれば、同じ場所に繋がる。そう思ったんだけど、トーイとエマイユちゃんは違ってたのかな」
少しだけ、悲しげに微笑み、カイはエマイユを見つめる。
「……私が怒っているのは、そんな大事なことを私に話さずに進めたことだ」
カイの言葉に、落ち着きを取り戻したエマイユは小さく不満を呟く。
「トーイに話したら、そっちが気になって国のことに集中出来ないでしょ。だから言わなかったんだよ」
「それがおかしいって言って」
「……あの、エマイユさん。ちょっといいですか?」
イストがエマイユに近付き、ぼそりと尋ねる。
「ん? 何だい、イスト。私は今、カエティスと話してるんだけど」
「隊長がトーイ様に言わなかったのは理由があるんです」