公爵の娘と墓守りの青年
「くっそぉ……。これじゃあ、私、カエティスを怒れないじゃないか」
口を大きく膨らませて、エマイユは顔を真っ赤にしたまま、カイに近付く。
「ん? エマイユちゃん、イスト君と何の話をしていたんだい?」
不思議そうな顔をしつつもカイは優しく微笑む。
エマイユは何も言わずに、カイの腹を拳で思いっきり殴った。
「ぐふっ!」
突然の行動に対応出来ず、そのまま一撃を喰らったカイは間抜けな声を上げる。
同じくエマイユの行動を見たリフィーア達も面食らった顔をする。
「ごほっ、ごほっ……。エマイユちゃん、いきなり何をするんだい」
地面に膝をつき、殴られた腹を押さえてカイは咳き込みながらエマイユを見上げる。
「私に言わなかったことはクレハに免じて、今ので勘弁してやる。次、同じことしたら許さないからな!」
「え……クレハ? イスト君、エマイユちゃんに何を言ったんだい?」
「えーっと……まぁ、ちょっとお話をしただけです。隊長、それよりお腹大丈夫ですか?」
苦笑いを浮かべ、イストはカイを心配そうに見つめる。
「うん、傷が開きそう……」