公爵の娘と墓守りの青年
カイの後ろ姿を見送り、ネレヴェーユは小屋の中へ入った。
墓地を後にしたリフィーアは、叔父と従兄が住むウィンベルク公爵の屋敷へ向かった。
屋敷へ向かうリフィーアの歩調はいつもより速い。
叔父と従兄にどうしても伝えたいことがあるからだ。
「カイさんにはゆっくりでいいって言われたけど、私は、ウェル様を守りたい……」
普段より速い歩調で歩きながら、リフィーアは呟く。ウェルシールを守る。
その為には何が必要か。
それを考えたら、すぐ答えが出た。
叔父から聞いた話、先程見たカイの過去。
辛いことがあったのに人に見せることなく笑うカイと、いきなり国王になり、必死に国王を務めるウェルシールを見て、覚悟が出来た気がする。
ウェルシールを守る為に、ウィンベルク公爵を継ぐ。その理由は自分勝手かもしれないが、リフィーアには大事な理由だ。
「……もう、逃げていられないね。私も立ち向かわないと」
叔父の屋敷に着き、門の前でリフィーアはぐっと手を握る。
意気込んだ緑色の目を屋敷に向け、リフィーアは扉を開けた。
叔父と従兄に自分の決意を伝える為に。
「叔父様、私決めました……!」
叔父の部屋の扉を開けるなり、リフィーアは開口一番そう告げた。