公爵の娘と墓守りの青年
「……公爵になるということは、今までと違って命を狙われるようになるんだよ。それでもいいのか?」
マティウスの問いに、リフィーアはゆっくり頷いた。
「覚悟は、出来ました……。ウェル様やカイさんだけを危険な目に遭わせる訳にはいきません。ウィンベルク公爵の位を継いで、二人を守ります」
真っ直ぐ叔父を見返し、リフィーアは告げた。
その言葉を聞いたマティウスは静かに目を閉じ、頷いた。
「……分かった。やっぱり兄上似だな」
「え?」
「ウィンベルク公爵を継ぐと決めた理由だ。兄上は義姉上とウェルシール陛下のお父上、カエティス様を守りたいからという理由でウィンベルク公爵を継いだんだ。ウィンベルクの血なのかな……」
息を吐き、マティウスは苦笑いを浮かべた。
「私も兄上と義姉上が亡くなった時、二人の忘れ形見のリフィーアと家族を守ると決めて、ウィンベルク公爵を継いだ。ただ、私はウィンベルク公爵の血を継いでいても傍系。直系ではないから、狙われることはほとんどなかった。だが、リフィーアは直系だ。本当にいいのか?」
「はい。いつまでも逃げる訳にはいきませんから」
にっこりと柔らかく微笑み、リフィーアは頷いた。
「……分かった。では、リフィーア。おいで」
そう言って、マティウスは立ち上がり、書棚に近付き、慣れた手付きで書棚から本を何冊か取り出す。
すると、書棚が右へゆっくりと滑り移動した。