公爵の娘と墓守りの青年
「私よりはリフィーアが持っていた方がいい。その剣はウィンベルク公爵を守る。後でカエティス様のところに行くのだろう?」
「はい」
「それならリフィーアが持っておくべきだ。私は出掛ける予定はないから」
穏やかに微笑み、マティウスはリフィーアに言って机に広げた書類を整えた。
「……さて。明日からリフィーアに公爵についてや仕事などを教えないとな」
「……あ」
叔父の言葉に、リフィーアは苦い顔をした。
ただ、なりたいという思いだけで勉強のことはすっかり忘れていた。
リフィーアの苦い顔を見て、マティウスはニヤリと悪戯を思い付いたような笑みを浮かべる。
「サイラードにも話しておこう。嬉々としてみっちり教えてくれるぞ」
「あの、叔父様、それはちょっと……」
従兄の喜びとみっちり教えてくれそうな様子を想像し、リフィーアは更に苦い顔をする。従兄のサイラードは勉強に関しては容赦がない。
それを知っているリフィーアとしては出来れば、まだ優しい叔父に教えて欲しい。心の底からそう思った。
「ははは。まぁ、とにかく。今日は疲れただろう? この家で休みなさい」
姪の表情で何を思っているのかを察し、微笑みながらマティウスは告げた。