公爵の娘と墓守りの青年

「そうします。部屋に行きますね、叔父様」

叔父から受け取った白銀の鎮魂剣を両手で抱えてお辞儀をして、リフィーアはマティウスの部屋を後にした。

「リフィーアの決意にカエティス様はどう思うかな。ウェルシール陛下もどうされるだろうか」

リフィーアが出た扉を見つめ、マティウスは静かに呟いた。





クウェーヴィア城に戻り、ウェルシールは足早に公務室に入った。
その後をイスト、エルンストが続き、公務室に入る。

「ウェル様、どうされたのですか? いきなり城に戻られて」

主君の突然の行動を疑問に思い、エルンストは尋ねる。

「したいことが見つかったんだ。ただ、その為にはちょっと書類がいるから用意しようと思って」

質問に答えながら、ウェルシールは羊皮紙を机の引き出しから取り出し、羽根ペンにインクを付け、文章を丁寧に書き始める。
ウェルシールがしたいこととは何なのか分からず、イストとエルンストの兄弟はお互いの顔を見合わせた。
その間にも、ウェルシールは文章を書き終え、羊皮紙にクウェール王家の印章を押す。

「……出来た」

書き終えた羊皮紙を見つめ、ウェルシールは小さく息を吐いた。
ウェルシールが書いた羊皮紙を彼の背後からイストとエルンストは覗き込み、内容を読む。

「えっ……ウェル様?」

内容を読んだイストが驚愕の表情を浮かべ、主君を見た。横ではエルンストも無言で兄と同じようにウェルシールを見ている。

「これが僕がしたいことだよ。カイさん、応えてくれるかな……」

そう呟き、ウェルシールは公務室の窓から見える空を眺めた。
空はカエティスの都の墓守りの髪と同じ赤い色をしていた。



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