公爵の娘と墓守りの青年
「お、おはようございます、カイさん!」
現れたカイに目を輝かせて、ウェルシールは挨拶をした。
「おはよう、ウェル君、皆」
穏やかに微笑み、カイはウェルシールに近付く。
近付いてくるカイをきょとんとした顔でウェルシールは見つめる。
「あっ!」
ウェルシールの隣にいたリフィーアは普段のカイと少し違うことに気付き、声を上げた。
「ど、どうしたんだい、リフィーアちゃん」
リフィーアの声に驚き、カイは目を瞬く。
「カイさん、服が違います」
「え?」
リフィーアの言葉を聞き、ウェルシールやエマイユ達がまじまじとカイを見る。
見るとカイの服装はいつもの黒いマントと布製の上下の服ではなく、白いマントと上質な絹で織られた服を身に纏い、二振りの剣を腰に引っ掛けていた。
騎士に会ったことがないリフィーアの目で見ても分かる騎士の正装をカイはしていた。
「あ、本当だ。服が違うね」
言われて気付いたエマイユがニヤリと意味ありげにカイを見て笑う。
「いや、そうじっくり見られると恥ずかしいんだけど……。それと、エマイユちゃんの笑みが悪い笑顔になってるよ」
困ったように頬を掻き、エマイユを見て、カイは苦笑いを浮かべる。
「しょうがないよ。この後の展開が読めたんだからさ」
「あの、エマイユさん。この後の展開とはなんですか?」
小首を傾げ、今まで静かにやり取りを見ていたネレヴェーユが尋ねる。小首を傾げたと同時にネレヴェーユの白に近い緑色の長い髪が一房、肩から流れる。