公爵の娘と墓守りの青年
「トイウォース殿っ?!」
トイウォースの声に驚き、ウェルシールは従兄の名を呼ぶ。
そして、近付こうとした時、カイがウェルシールを止める。
「カイさん……?」
「……イスト君。ウェル君とリフィーアちゃんを。トイウォース君にまた負の集合体が入ってしまったようだから」
「え、さっき隊長が浄化したはず……」
眉を寄せ、イストはカイに真意を問おうとする。
が、カイの表情は真剣そのもので、冗談で言っていないのが分かった。
「はい、分かりました」
素直に頷き、イストは翠宵の剣をいつでも抜けるように柄を握り、ウェルシールとリフィーアに近付く。
エルンストもイストと共にウェルシールとリフィーアを守るように前に立つ。
「ネリーとエマイユちゃんも離れて。ビアン」
「――分かってる」
溜め息混じりで頷き、ビアンがネレヴェーユとエマイユに近付く。
「……トイウォース君、聞こえるかい?」
「……何とか……ただ、あまり時間が……」
地に膝をつき、トイウォースは力ない声で苦しそうに頷く。