公爵の娘と墓守りの青年
「分かった。今から浄化してみるよ。苦しいと思うけど……」
そう言って、カイは蹲るトイウォースに近付く。
そして、自分の背後に鞘から抜いた赤眼の剣を地面に刺す。
トイウォースに手を当て、浄化の光を放つ。
「……うっ……うう……っ」
白い浄化の光に反応して、トイウォースは苦しそうに呻く。
黒い霧のようなモノがトイウォースから離れていくのがリフィーア達にも見えた。
『ウオオォォ……!』
負の集合体の声にならない声が響く。
黒い霧を見上げ、カイは鴨頭草の剣を抜き、斬り上げる。
『オオォォォォ……』
恨みに似た声が響き、黒い霧が霧散した。
消えたのを確認し、カイはトイウォースの方を向く。
「トイウォース君、大丈夫かい?」
「……大丈夫です。お手を煩わせてすみません」
青ざめた顔のまま頷き、トイウォースは力なく笑う。
「良かった。トイウォース君、ネリーとエマイユちゃんと一緒にビアンに守ってもらって。ウェル君、どうやら早く指輪を呼ばないとまずいみたいだよ」
「え……?」
目を瞬かせて、ウェルシールはカイを見る。
尋ねる前に地面の底から唸り声が聞こえてきた。