公爵の娘と墓守りの青年
「きゃ」
その声にリフィーアが小さく悲鳴を上げる。
リフィーアの声に心配して、ウェルシールが安心させるように彼女の手を握る。
「リフィさん、大丈夫です。僕もカイさん、皆さんがいますから」
「ありがとうございます、ウェル様」
嬉しそうに微笑み、リフィーアは頷いた。
尚も続く唸り声を聞いている内に、リフィーアはあることを思い出した。
「カイさん、この声、初めてカイさんに会った時にも聞こえましたよね……?」
「よく覚えてたね。そうだよ。あの時の声だよ。俺のお腹の音かと勘違いしてたと思ってたけど」
苦笑いを浮かべ、カイは用心深く辺りを見渡す。
「ちょっとカエティス、この声、もしかして……」
リフィーアの言葉で思い出したようにエマイユがカイを見る。
「うん。この墓地に封じてる負の集合体の本体だよ。さっき本体がクウェール王家の血に反応してトイウォース君の中に入ろうとしたんだよ」
「僕ではなく、どうしてトイウォース殿に……?」
「私の中に負の集合体の一部が長い間いたし、ウェルの近くにカエティス殿やウィンベルクのお嬢さんがいて、二人が持つ剣に守られていたからだと思う」
苦笑いを浮かべ、トイウォースが告げると、申し訳なさそうな顔でウェルシールは俯いた。
「……ごめんなさい」
「ウェルが謝ることじゃないよ」
ウェルシールに近付き、トイウォースは子供にするように頭を撫でた。
「そうそう。謝ってもらうのは元祖父だから。どちらかというとウェルシールは元祖父に謝ってもらう側だよ」
トイウォースの言葉に同調して、エマイユが言う。
そして、彼女もいつでも応戦出来るように細身の剣の柄を握る。