公爵の娘と墓守りの青年

白と金の色が混ざった指輪は豪華な飾りはなく、変わっているのは指輪自体の色と、指輪が発する力くらいでその他はごく普通の指輪だった。
指輪が発する力も、カイに近付くか、指輪に触れないと感じないくらい巧妙に出来ていた。
怪しまれない為の工夫なのだろうとウェルシールは感じた。

「……綺麗な指輪ですね」

「まぁ、国王が継ぐ物だから、それ相応の物じゃないとね」

ウェルシールの呟きに頷き、エマイユは肩を竦めた。
カイも笑みを浮かべて頷くと、真剣な表情に変え、若き国王に告げる。

「ウェル君、指輪を嵌めた方がいいよ」

「え?」

「……封印を解く前に解かれるかもしれない」

険しい表情で、カイは墓地の奥を見つめる。

「分かりました。今から嵌めますね」

カイの言葉に頷き、ウェルシールは指輪を左の人差し指に嵌めようとした時、エマイユが声を上げた。

「あ、待って。ウェルシール、指輪を嵌めるなら右にして」

「……え? 何故ですか?」

「右手に嵌めないといけないように作ったから」

「どうしてですか……?」

目を何度も瞬かせ、ウェルシールはエマイユを見た。

「……その……やっぱり左手は約束事が多いから、意中の人に勘違いされたら困るでしょ?」

言いにくそうにエマイユは早口で説明した。
その説明に、ウェルシールとリフィーアの顔が同時に赤くなる。

「だから、右手にしてね」

ニヤリと笑みを浮かべ、エマイユはウェルシールに言う。


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