公爵の娘と墓守りの青年
「僕も正確には分かりません。分かりませんが、もしかしたら、民達を巻き込んでの戦いになってしまうかもしれません……」

青ざめた顔で、ウェルシールは告げた。

「何だか飛躍し過ぎてるね……。それとどうして俺が関係あるのかな?」

眉を寄せ、カイは聞いた。

「……貴方の力を貸して欲しい、と思ったんです。戦いになった時、民達を守れるように」

静かに、静かにウェルシールは言った。
彼の顔は苦悩に満ちている。

「伝説の守護騎士の貴方なら、それが可能だから……」

真摯な眼差しでウェルシールはカイを見つめた。

「……いや、あのね? さっきから言ってるけど、俺はカエティスじゃないからね?」

小さく息を吐き、カイは呆れた顔で言った。
これでは堂々巡りだ。
何度言っても話は戻り、終わらない。
カイの言葉に理解したように頷くウェルシールだが、目を輝かせてこちらを見ている。

「……全然、分かってないじゃん……」

誰にも聞こえないような小さな声でカイは呟いた。
その声を耳にしたのか、ビアンが鼻から息を吐く音がした。
カイはちらりとビアンに目を向けると、何食わぬ顔で牙を見せた。
大きな溜め息を吐いて、カイはウェルシールに目を戻した。
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