公爵の娘と墓守りの青年

頷いて、ウェルシールとリフィーアは手を差し出す。

「指の先のところを切るから、切った後は……」

「私がお二人の治癒をします」

ふわりと笑って、ネレヴェーユが声を掛ける。

「ありがとうございます、ネリーさん」

にっこりとリフィーアも微笑む。
「あの、ありがとうございます、ネレヴェーユ様」

恐れ多いというような表情でウェルシールは恐縮する。

「カイさん、お願いします」

ウェルシールが右手の人差し指をカイに差し出す。リフィーアも同じように右手の人差し指を差し出す。

「ありがとう。ちょっと痛いけど、ごめんね」

そう言って、カイは懐からナイフを取り出し、ウェルシールの人差し指に刃を当てる。当たったところから小さな赤い線が浮かぶ。小さな血溜まりをそっとナイフで掬い、カイは洞窟の中央の棺と、その真下にある魔法陣を結ぶ水晶にウェルシールの血を垂らす。垂らした血は水晶に溶け、赤い光になって魔法陣を駆け巡る。
続けてリフィーアの血を水晶に垂らすと、赤い光は更に輝きを増して魔法陣を駆け巡る。

「……すごい」

ネレヴェーユに傷を癒してもらい、小さくウェルシールは呟く。

「そうですね。でも私は怖いです」



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