公爵の娘と墓守りの青年
ウェルシールを癒し、リフィーアの傷を癒しながらネレヴェーユは目を伏せる。
「ネリーさん、どうしてですか?」
「負の集合体は、ネレヴェーユ様をずっと求めていたからね。かなりしつこかったし。何度私が追い払ったことか。カエティスが来てからはカエティスに任せたけど」
右手に持っていた鴨頭草の剣をすぐ横に突き刺し、更に赤眼の剣を鞘から抜いて、背後に刺すカイをちらりと横目でエマイユは見る。
カイは自分の指に刃を当てて血を掬いながら、話を聞いていたのか苦笑いする。
そして、ナイフで掬った自分の血を魔法陣にカイは垂らす。
カイの血が魔法陣に触れると、先程までの赤い光が白い光に変わる。
白い光が強くなり、洞窟中央の棺の蓋が勢い良く開かれた。
開かれたのを見て、イストとエルンストがウェルシールとリフィーアの前に立つ。二人に守られながらも、ウェルシールは細身の剣を構え、リフィーアも白銀の鎮魂剣の柄を両手で握る。エマイユ、トイウォース、ビアンもネレヴェーユを守るように構える。
それぞれが警戒する中、棺に一番近いカイだけが洞窟の中央にあるそれを静かに見つめていた。