公爵の娘と墓守りの青年
十章 騎士の決意と女神の涙

 洞窟の中央にある棺の蓋が開かれ、リフィーア達は緊張する。
 中には何が入っているか分からない。
 カイの過去やトイウォースの身体から出てきた黒い霧が出てくるのか、棺だから死者が出てくるのか分からない。
 リフィーアは不安からぎゅっと白銀の鎮魂剣の柄を手の先が白くなるくらいまで握り締める。隣に立つウェルシールもリフィーアを守るように彼女の少し前に立ち、カイの動向と棺を見つめる。エマイユやイスト達も同じようにカイの動向や棺から何が出てくるのかを緊張の面持ちでそれぞれ見ている。
 棺の近くに立つカイは横に刺していた鴨頭草の剣の柄を握り、棺に一歩、二歩と近付く。
 カイの行動にぎょっとして、エマイユが声を上げる。

「ちょっと、カエティス!」

「――大丈夫。そっちには行かせないよ」

 静かに微笑み、カイは何かが見えるのか、鴨頭草の剣を少し持ち上げる。

「?! 何か、いるの?」

 警戒するようにエマイユは腰を低く落として、細身の剣を構える。

「……うん。そっちからは見えないと思うけど、いるよ」

「……何がいるんですか、隊長」

 前世の自分が使っていた翠宵の剣を構え、イストがカイに声を掛ける。

「――何がいるとは心外だね、ミシェイル君」



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