公爵の娘と墓守りの青年
そして、ゆっくりとカイから更に先に立つ目の前のモノにイストは視線を移す。
五百年前、前世で自分を本当の子供のように可愛がってくれた大切な人――ベルナートの姿をしたモノがこちらを見ている。五百年前の姿のまま、今まで見たことがある亡者とは違い、皮膚はただれてなく、綺麗な肌をしていた。服装も五百年前の時と変わらない司祭の服。亡者と同じところといえば、血が通っていない青白い色をしているくらいだろうか。
そのベルナートの姿をしたモノを見据えたまま、カイは鴨頭草の剣先を対面にいる相手の首へと向け、構える。
カイの行動にイストは目を見開く。
「隊長……!」
「私を斬る気かい? カエティス君」
ベルナートの姿をしたモノが穏やかな笑みを浮かべ、カイに尋ねる。
「――司祭様の身体を使って話すのをやめてもらおうか。司祭様の身体が穢れる」
静かに、低い声でカイは告げる。
「カイさん……」
今まで聞いた中で一番低い声で言うカイにリフィーアは身を強張らせる。
「私が穢れてる? 一番穢れてる君が言うのかい? 育ての親のカーテリーズを殺した君が。私が愛したカーテリーズを殺した君が」
尚も穏やかな笑みを浮かべたまま、ベルナートの姿をしたモノがカイに言う。