公爵の娘と墓守りの青年
目の前のモノの言葉を聞いても表情は変えず、カイは鴨頭草の剣を構える。
「一番穢れてる? 知ってるよ、そんなこと。言われなくても……っ!」
そう言いつつ、カイは一気にベルナートの姿をしたモノとの距離を一気に詰めて、相手の頭目掛けて浄化の光を放つ。が、ベルナートの姿をしたモノは微笑むだけだった。
「――っ?!」
目の前の相手を見て、カイは小さく息を飲んで距離をあける。
「……なるほど。司祭様の身体を使って、浄化の耐性を持とうとした訳か……」
眉間に皺を作り、鴨頭草の剣の柄をカイは握り直す。
「カエティス、大丈夫かい?」
「何が? エマイユちゃん」
少し離れた、後ろにいるエマイユを見ないでカイは問い返す。
「ベルナート殿の身体に前世の私の元祖父が入ったこと。君のことだから動揺を隠してるように見えるから。それと、君の浄化が効かないこと」
「……効かないという訳じゃないよ。他にも方法があるしね」
小さく息を吐き、カイはベルナートの姿をしたモノを見る。
「動揺もしてないよ。予想はしてたから。ただ、腹が立っただけ」