公爵の娘と墓守りの青年
「はい、そうです。俺とエルンストは兄弟です。結構、顔とか似てるでしょ?」

ニヤリと口元に笑みを浮かべ、イストはリフィーアを見た。
リフィーアはまじまじとイストを見てみると、確かに顔や背格好が似ている。
口調や雰囲気はどちらかというとカイに似ている。そんな気がした。

「そ、そうですね。似てます」

「でしょ? 嬉しいことを言うなぁ、お嬢ちゃん」

にこやかにリフィーアに言い、イストはカイに目を移す。カイに何かを言おうとした時、墓地の門の近くからエルンストの声がした。

「イスト兄さん、何をなさってるんですか。時間が惜しいので、早く行きますよ!」

苛々したような、慌ただしい声でエルンストはイストを急かす。
その横ではエルンストにしっかりと腕を掴まれたウェルシールがいる。

「はいはい。行きますよー。全く短気だなぁ、エル君は」

ひらひらとイストは手を振り、苦笑した。

「今日はウチのウェル様がご迷惑をお掛けしました」

カイとリフィーアにイストは頭を下げた。

「いや、気にしなくていいよ。迷惑じゃなかったし」

ちょっと驚いたけど、と続けて、カイは穏やかに微笑する。

「そうですか。良かった。それではまた会いましょう。ね? カエティス隊長」

にっこりと微笑みかけ、イストは最後だけカイに聞こえるくらいの小さな声で告げた。
イストの最後の一言に、カイは瞠目する。
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