公爵の娘と墓守りの青年
三章 女神の想いと再会
――貴方に会えなくなってから、どのくらい年月が過ぎたのだろう。
「早く会いたいなぁ……」
何もかもが白い部屋で、ぽつりと彼女は呟いた。
その声は、小さな鈴を転がしたような、澄んでいてとても綺麗だ。
何もなく、部屋の中央に人の顔より一回り程大きな水晶玉が土台と共にあるだけだ。
その水晶玉は彼女の意思で外の世界を映すことが出来る。
閉じ込められた彼女にとって、その水晶玉が外の世界と繋がっている唯一の物だ。だが、その水晶玉でも彼女が一番見たいものを映すことは出来ない。
そのように彼女の父が作ったからだ。
そして、彼女をこの部屋に閉じ込めたのも父と兄と姉達だ。
彼女は小さく息を洩らした。
「ねぇ、貴方は私のことを覚えている……?」
この部屋に閉じ込められてから、何度も何度も問い掛けた言葉だ。
その問い掛けの答えは長い年月を過ぎても、彼女の中で消化しきれずにいる。
「……人は、忘れやすいわ。だから、貴方も忘れているのかしら」
そう考えてしまい、彼女の胸が小さく痛んだ。
眉を寄せ、目尻に涙が溢れそうになる。