公爵の娘と墓守りの青年
「え……?」

青年の説明に、ネレヴェーユの思考が止まる。

「……私、この部屋から出られるのですか……?」

聞き間違えたのではないかと思い、ネレヴェーユは青年に聞く。
その問い掛けに青年は大きく頷き、爽やかに微笑んだ。

「ええ、そうです。ここから出られます」

「……本当に……本当ですか……?」

青年の言葉が信じきれず、ネレヴェーユは立ち上がり、何度も確認する。

「本当ですよ。良かったですね」

「……はい。本当に嬉しい……。これで、彼に会えます」

目から涙が溢れ、ネレヴェーユは両手を顔にあてる。
その様子を青年は穏やかな笑みを浮かべ、見守った。

「……さて。私はこの辺で、お暇させて頂きます。そろそろ戻らないと朝になりますし」

「えっ? あ、はい。ありがとうございます、トーイ。貴方のおかげで、彼に会いに行けます」

花のように微笑み、ネレヴェーユは青年に礼を言った。

「いえ。私もネレヴェーユ様とカエティスのことが、別の生を受けてからもずっと気になっていたので、ちょうど良かったですよ」

青年もネレヴェーユに微笑みを返し、部屋の中央に置いてある水晶玉を見た。
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